現在の研究活動

 

地理情報システムを用いた都市解析

 

地理情報システム,いわゆるGISには,土木計画の観点から大きく次の2つの特徴があります.

ひとつは,従来困難であった空間分析が可能となることです.都市を考える上で外部性は重要な要素です.特に,空間的な外部性は,都市の形成要因そのものであるとともに,ほとんどの都市問題と何らかの関連があると言っても過言ではないでしょう.しかし,従来のように表計算や図表などを用いたのでは,必ずしも現実に即した空間分析はできません.しかし,GISが持つさまざまな空間分析ツールは,これを可能し,それによって,新たな問題に対する研究が広がっていくと考えています.具体的には,空間分析が特に有効な,土地利用と交通の総合的な計画問題,および環境評価の問題に適用していくことを考えています.

また,GISのもうひとつの特徴は,分析の飛躍的な迅速性です.さまざまな理論構築は,実証があって初めて説得力を持ちます.しかし,都市を取り巻く分析対象は複雑化しており,取り扱うべきデータも大量かつ広域にわたるものが多くなりました.このため,これまでの研究の中には,実証分析が十分とはいえないものが数多く見受けられます.そこで,特に,総合性や広域性が要求される郊外化問題,都心商店街活性化問題,都市交通計画などのGISを適用し,実際のデータに基づく具体的な提案を可能にするような研究を進めたいと考えています.

 

会計手法を用いた公共事業評価ツールの開発

 

現在,地方自治体の真の財政状況を知る目的で,公会計に企業会計的手法を取り入れる自治体が増加しています.そこで,それに加えて,従来研究してきた費用便益分析で対象としている経済便益および費用をも導入した自治体会計を提案しようと思っています.これにより,金銭的な投資をつぎ込んだにもかかわらず実際に便益を発生させないような非効率な投資を続けてきた自治体を評価することが可能であり,自治体の真の価値を知ることが可能になります.

会計手法は,財務モデルとして研究されてきたものの,社会会計,環境会計など,土木計画にも密接な関連のある新しい会計手法が次々と提案されてきています.重要な点は,現在および将来の社会経済学的な価値を導入しようという動きであり,具体的に金銭の授受を伴わない価値を会計システムに組み入れるという意味で画期的です.この考え方が完成すれば,ミクロ経済理論に立脚した社会経済モデルと,わかりやすく実用性の高い会計モデル間の整合性を確保することができると考えています.

社会基盤整備を中心とした公共政策評価に関する静学的な範囲での理論的研究は,一応の成果があります.今後は,動学化,不確実性,不均衡などの方面での理論的研究が中心となると思われます.しかし,これらの研究は,理論的にも数多くの課題がある上に,実用的なものとなるにはかなりのギャップがあるといわざるを得ません.

この状況に対応するひとつのきっかけが,会計システムとの融合です.会計システムは,毎年の事業評価が可能なため動学的な社会経済変化を盛り込むことができ,金融工学におけるリスク分析と融和性が高いため不確実な条件も盛り込み易いと考えられます.

公共事業に関わる公共政策のあり方は,近年のPFIへの高い注目度を指摘するまでもなく,多様な可能性を持ち始めました.特に,民間手法をどのように導入していくかが重要視されるでしょう.このような状況では,会計手法を中心とした研究が,大きな意義を持ってくるものと考えています.

 

 

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